STILL CRAZY

病気と芸術のギリギリをゆく

前澤の100万円

 

 

「RTすればあなたにも100万円のチャンス!!」

 

''ボタンを押せ!!''

「っんだの、緑カットインかよ…」ぐらいの信頼度だ。

 

前澤社長が100万円を配っている。自宅の錦鯉に餌を与える感覚だろう。僕らは錦鯉にならないか?と誘われている。今はそのチャンスなんだ、と。

 

 

僕は23歳だ。金に困っている。というか、この歳でゆとりある生活を送れている人がいるだろうか。いたとしても全体の数%程度だろう。

そういえば以前も前澤さんは金を配っていた。 

 

-----------------------

「注目されたいんだと思う」

一人の女が、ワイングラスを回しながら言う。

「そうですよね」

僕も、皿の上に乗ったチーズに手を伸ばす。

このバーで流れるのは、日にもよるがJazzだ。マスターが選曲している。R&BとJazzを合わせたような、落ち着いた雰囲気の音が流れている。

「寂しいんじゃないかな」彼女は紅いリップを口に蓄える。

「寂しい…んですかね?」

「そうよ。注目されたいってことは、寂しい証拠よ。ましてや普通の人間は、金を配らないもの(笑)」と、彼女は笑いながら言った。

僕もそれにつられて笑ったが、すぐに元の表情に戻った。

 

タバコの煙が夜に染みる。

僕はなんとなく、それとなく、始めからなかったかのように、前澤のフォローを外した。

-----------------------

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

死骸の話。

 

カフェイン、アルコール、タバコ、その他諸々。。。

 

日常をドラマチックへと変えるスパイスとも言えるドラッグ。僕もその恩恵を授かっている。

 

というのも、今の気分はとても最悪だ。僕の家の前には、小さなパーキングエリアがある。いったいいくらで貸しているのか不明だ。それでも、おばあちゃんの歯の治療代くらいにはなっている。それはともかく、気分は最悪なんだ。

 

道路を歩いていると、猫の死骸や鳥の死骸を目にすることがある。「はっ」としたり、「うっ」としたりすると思う。その類で、僕の目の前にあるコインパーキングのところに鳥の死骸があった。

何でこんなところに…。

誰かが運んでくるはずもないし、本当にたまたま僕の家のコインパーキングだった。

その死に方は、あんまりにも無残だった。コインパーキングには、一定時間経つとロックされるバーがついている。普段は閉まっているが、車が駐車すると上にあがる。たぶんだけれど、上に上がっているときに、鳥がそこへやってきて、下へ下がったときに押しつぶされたのだろう。

死後から数時間が経っている感じで、あんまり直視できなかった。

 

僕は見てしまった

 

 

3席ある優先席の左端には、

インドかネパール出身か正確にはわからないが、それらしき肌の色をした女の人が座っていた。小麦色よりも少し茶色の肌だ。

僕はそれとなく、風景に目をやりながら、右手のスマートフォンで音楽を聴いていた。

 

僕の目の前に座っている女性は、髪の色と肌の色がだいたい同じで、年齢は20歳前後だと思われる。

 

その人が、鼻をほじっている。

「え、」

僕もそう思った。

しかも、取れた鼻くそを座席にくっつけた。

少し粘りっけがあったせいか、2.3回ほど擦り付ける動きをみせた。

 

その女性は僕と目が合ったけれど、特に恥ずかしげな表情は見せず、その後も何度か鼻をほじった。

 

 

 

散文①

 

 

よだれのように垂れた氷柱 

夏の匂いが残ったカーテン 

東京のビル街

地下の排水溝で溜まる

やくざな言葉 

忍者のように消えた女 

タイトルのない本に込められた 

スープよりも濃い一行

悲しみの海に浮かぶヨット

 

窓から見えるマンション

排気ガスにまみれた鳥の行方 

捨てられたタバコ 

手を繋ぐ子供 

花が種落とすアスファルト

通り雨でできた小さな池に

トンボが卵を産む 

生産性のない行為は美しい

 

この夜を越えるための言葉が欲しい

形のないものに救われる

吐き出したいこの感情に

せめてもの名前を付けて

ゴミと一緒に燃やしてしまおう 

 

灰色の言葉

星の散らばる夜空

ダイヤモンドよりも美しいあなた

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

【詩】「季節」

 

 

 

春の心地よい日差しが頬をなでる

昔に忘れたはずの記憶には、

それぞれに名前が付いていて

例えば 2017.12.25 みたいに

瓶の上蓋に白いシールが貼られている

僕はそのシールをみて

どの記憶の匂いを嗅ぐのか吟味する

その時の匂いを嗅げば、

あの頃の記憶がゆっくりと鮮明に蘇る

 

シャトーブリアンに塩をかける

その上に胡椒

箸が導くのは

ワサビが乗っている小皿

僕はそれを勢いよく豪快に食べた

肉は下の上でトロける

それはまるで遊女の踊りだった

もはや味覚しか正常に機能せず

そのほかの五感は働くことをやめた

踊り子も踊るのをやめた

 

道の真ん中で立ちすくむ少年は

月と太陽の密会を知った

虹のかかる見えないところで

ラブホテルに行くのを見た

月と太陽がまさかそんなことをしているなんて

少年は子どもながらに落ち込んだ

 

朝が迎えに来てくれた

バターは夕陽の熱で溶けた

君の顔を近くで見れば

流した涙の軌道がよくわかる

それはまるで滑走路のように

正しく、真っ直ぐに流れ落ちた星のようだ

 

 

 

 

 

 

 

【音楽紹介】Ramza I Stay In The Mood

f:id:sota1021gogo:20190216124940j:image

 

Ramza- I Stay In The Mood これは是非とも 音楽の教科書に取り入れるべきMixだと思う。

この音楽を聴けずには死ねない、という音楽があるとするなら、僕は間違いなくこのMixをあげるだろう。〈Sota Teru〉