3席ある優先席の左端には、
インドかネパール出身か正確にはわからないが、それらしき肌の色をした女の人が座っていた。小麦色よりも少し茶色の肌だ。
僕はそれとなく、風景に目をやりながら、右手のスマートフォンで音楽を聴いていた。
僕の目の前に座っている女性は、髪の色と肌の色がだいたい同じで、年齢は20歳前後だと思われる。
その人が、鼻をほじっている。
「え、」
僕もそう思った。
しかも、取れた鼻くそを座席にくっつけた。
少し粘りっけがあったせいか、2.3回ほど擦り付ける動きをみせた。
その女性は僕と目が合ったけれど、特に恥ずかしげな表情は見せず、その後も何度か鼻をほじった。