STILL CRAZY

病気と芸術のギリギリをゆく

【詩】「季節」

 

 

 

春の心地よい日差しが頬をなでる

昔に忘れたはずの記憶には、

それぞれに名前が付いていて

例えば 2017.12.25 みたいに

瓶の上蓋に白いシールが貼られている

僕はそのシールをみて

どの記憶の匂いを嗅ぐのか吟味する

その時の匂いを嗅げば、

あの頃の記憶がゆっくりと鮮明に蘇る

 

シャトーブリアンに塩をかける

その上に胡椒

箸が導くのは

ワサビが乗っている小皿

僕はそれを勢いよく豪快に食べた

肉は下の上でトロける

それはまるで遊女の踊りだった

もはや味覚しか正常に機能せず

そのほかの五感は働くことをやめた

踊り子も踊るのをやめた

 

道の真ん中で立ちすくむ少年は

月と太陽の密会を知った

虹のかかる見えないところで

ラブホテルに行くのを見た

月と太陽がまさかそんなことをしているなんて

少年は子どもながらに落ち込んだ

 

朝が迎えに来てくれた

バターは夕陽の熱で溶けた

君の顔を近くで見れば

流した涙の軌道がよくわかる

それはまるで滑走路のように

正しく、真っ直ぐに流れ落ちた星のようだ